《MUMEI》

「自分が何したか、分かっているのか?!」


一希はゴールの前で立ちすくむ俺に、言い詰め寄った。


「お前、やっぱおかしいぜ?」


味方の奴等もちらほらと、俺の方へ集まり出した。


「俺……オンゴールした…んか?」


未だ状況を把握出来ずに、一希に問うた。


「ああ。」


「うそ…やろ?

だってコートチェンジせんかったやないか!?」


「フェイクだよ。」


味方のうちの、一人が言った。


「凪谷はそれを分かってて、わざと走ったんだと思ってた。」


落胆にも近いようなため息が辺りから聞こえる。


「賢史、交代するか?」


一希が真剣に問い掛ける。


「……え?」


俺が……交代する…だと?


「ちょ、それは困るよ!」


「そうだ!

凪谷はこのチームのリーダーだし!!」


「何より要なんだから、抜けられたら困る!!」


次々と周囲から声が上がった。


「……今、なんつった?」


それらの声に反応して、一希が切れた。

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