《MUMEI》

翔太がヤマトにパスを出す、


と同時に麻倉が翔太に付く。


「い〜のかよ?」


麻倉に話しかける翔太。


「あ?」


「今までのウチじゃね〜んだ。
いつまでも俺に付いてていいのかって聞いてんだよ。」


「何言って…」


クロのパスからヤマトが2枚目三島を抜き去る。


「中を手薄にしててい〜のかって言ってんだよ。」


「ナイッシュー!!」


ヤマトのシュートが決まる。


後半9分。
11対10。


「両45が突破の鬼なんだ。


すぐに猪狩も決めはじめるぞ?


もっかいだけ言ってやるよ。


いつまでも俺に付いてていいのか?」


それは翔太の挑発だった。


麻倉がいて思うように動けない翔太の、


苦肉の策だった。


しかし、


効果は絶大。


なぜなら翔太の挑発は事実を指していたから。


1・5ディフェンスでは中の守りが薄くなる。


突破を得意とするヤマトと猪狩には格好の的だ。


さらに今コートにはクロがいる。


1・5ディフェンスの場面でクロのポストパスは成功率を何倍にも跳ね上がる。


今麻倉が翔太に付くのは賢い選択とは言えなかった。


「っしゃあ!!
1点差!!」


盛り上がる海南クラブ。


「ピー!!」


審判の笛が鳴った。


「秀皇大学のタイムアウトです。」


自軍のベンチに戻る選手たち。


「ま、
ゆっくり考えろよ。」


麻倉にそう言うと、


翔太もベンチへと向かった。

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