《MUMEI》

海南ベンチ。


「オッケー!!
いい感じだな!!」


「クロすげ〜な!!
あんなプレー初めて見たよ!!」


「ふふふふふ。
僕は常に新しいプレーを編み出す男だからね。」


「恭介も調子いいし!!」


「ですね!!」


「…?」


「…?」


「…恭介は?」


辺りを見渡す海南の選手たち。


「あそこ。」


猪狩が親指でオフィシャル席付近を指した。


「…何してんだあいつ。」


「話してんだろ。
…お姉さんと。」


恭介は姉の春奈といた。


「おいおい…
タイムアウトは1分だぞ…」

「問題はそっちじゃない。」


「はぁ?」


(恭介がお姉さんと話してることの方が気になるって話だよ。)

















「…何だよ?
試合中なんだけど。」


「…恭ちゃん。
手見せて。」


「は?」


「いいから!!」


春奈は強引に恭介の手を取った。


「いっ…」


「…やっぱり。」


恭介の右手は真っ赤になっていた。


「…球威を殺してもこれだからな。


そっちのエース。


大した人だね。」


「…秀皇のエースだからね。」


「まぁ…
姉ちゃんには悪いけど勝たせてもらうよ。」


「ピー!!」


審判の笛が鳴る。


「おっと。


行かなきゃ。


じゃ悪いけど。」


コートに向かう恭介。


「恭ちゃん!!」


恭介を呼び止める春奈。


「あ?」


「…無理しないでね。」


「…やだよ。」

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