貴方の中の小悪魔
を知る神秘の占い

《MUMEI》
不審者。
15:40

アキが好きだと云うクラシックの名曲をバックに、わたし達は少し遅めのティータイムを迎えた。

繰り返される優しい旋律に、いつしかわたしは軽い眠気を覚え、そしてウトウトとソファの上のクッションに顔を埋めた。


途中アキがタオルケットを掛けてくれたことや、ティーカップを洗う音にも気付いては居たのだけど、身体が云うことを聞かないので、そのまま再び浅い眠りに落ちて居た。



18:25

チャイムの音で目が覚めた。

薄目を開けて見ると、微かに西日が差し込んで居る。


アキの声が聞こえる。

「…いでよ。迷惑なの」

受話器を片手にチャイムを鳴らした人物と話して居るみたいだけど、なんだか雲行きが少し怪しい様子。


「…だから、もう来ないで。二度と会うつもりはないから」

小さな溜息のあと、「さよなら」とだけ告げて受話器を置くアキ。



わたしは声をかけるタイミングが掴めず、立ち尽くして何か考え事をしてるアキの後ろ姿を黙って見ているだけだった。



19:05

陽が落ちて部屋が真っ暗になった頃、わたしのお腹が鳴って、沈黙は突然破れた。



「…起きてたの?」

ホッとした様な半笑いの声でアキは云う。


「…うん」

恥ずかしいのと、後ろめたいのとで、これしか言葉が出ない。



「お腹空いたね」

そう云って電気のスイッチを押したアキの顔を、蛍光灯が照らし出す。


心なしか瞼が赤く腫れて居る様に思えた。


見間違い、なのかな。

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