《MUMEI》

身動きがとれなくなったわたしは、足をジタバタさせて、離せー!と半泣きで叫んだ。

「あの席にいるかぎり、わたしに幸せは訪れないんだよー!!」

千影は眉をしかめた。

「なに?どうしたの?変な宗教の本でも読んだか?」

「明るい未来は!?金のタマゴはっ!?勝ち組の将来はぁッ!?」


喚き散らすわたしに、昌平が席に座ったまま言った。

「璃子ちゃんが壊れた!」

アハハ!とバカに明るい声で笑う。
わたしを押さえ付けながら千影は、落ち着きなよ、と穏やかに言う。


「なんのこと言ってんのかわかんないけど、隣の席、義仲じゃん!授業中でも、彼氏といちゃつけんだし、最高でしょ!?」


一瞬、わたしの動きが止まる。


隣が、義仲……。

授業中でも、彼氏といちゃつける……。


つまり、千影が言いたいのは、



義仲=わたしの彼氏



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