《MUMEI》
すき、きらい
気が付くと珍宝は、氷室の両膝の間にしゃがみこんでいた。

氷室のそこは、いつの間にか剥き出しにされている。

「…!」

珍宝の赤く長い舌。先ほど見た時には、言い様の無い嫌悪感を催しただけだった。

しかしそれが今、氷室の中心に、執拗に絡みついていた。

はじめは音も無くさやさやと、やがてそこに魅力的な繊細さが加わって、氷室の敏感な神経を煽りはじめる。

静まり返った職員室に、先端をねぶり、根元を舐めずる、湿った舌の音が響く。

快感に打ち据えられた脳幹が痺れ、意識が遠のいていく氷室。

だが、それを現実に引き戻すかのように、珍宝の冷たい眼鏡フレームが、間欠的に氷室の下腹をかすめていた。

(ああ、あんなに嫌いだったのに、あんなに嫌いだったのに!)

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