《MUMEI》
老練な亀の陰謀
私、「亀」と申します。
重い甲羅を背負い、えっちらおっちら歩く姿を馬鹿にされる哀しき生き物でございます。
しかし、私とてやるときはやるものです。
私がやるということは、おこがましい事にございますが亀全てがやるという事です。

先程、森から出て来た身の程知らずの兎に「かけっこ」なる決闘を申し込まれました。
なんと愚かしい事でしょうか。
私が亀だから勝てると息巻いているのですね。
嘆かわしや、愚かしや。
私、いえ亀の本気と意地を見せ付けてやりましょう。
「ノブレス・オブ・リージュ」
先程の兎の振る舞いは高貴とは言い難いものですが、亀は高貴な生き物にございます。
それ相応の御返事をさせていただきましょう。

さて、お互いスタートラインに立ちましたがね。
兎は既に勝った気でいます。
その鼻を明かして差し上げましょう。
しかし、普通に私が勝った所でそれは御先祖様の跡を継いだだけ。
どうせならば、完膚無きまでにたたきのめして後世に語り継ぎたいものです。
どうやら、始まるようです。
それでは僭越ながら私が地獄へエスコートして差し上げましょうか。

一里(400b〜500b)地点に到着しました。
兎はもう少し先を行っているようですが、私は慌てずゆっくりと景色を楽しみながら行きましょう。
なにせ、二里地点には私が仕掛けた落とし穴があるのですから。
下には竹槍を仕込んで於いたので、運が悪ければ串刺しかもしれません。
くわばら、くわばら。

さて、二里地点に到着致しました。
どうやら、穴には見事に落ちなさったようです。
残念ながら姿を確認出来ませんね。
先に行かれたようですが、これで私が焦るわけがありましょうか?
いや、何もありません。
なにせ、二里地点と三里地点のちょうど中間地点には猟師達が待ち構えているのですから。

亀が人語を解せぬとどこの誰がお決めになったのですか?
それは先入観が生んだ妄想にございますゆえ、すぐ改め願います。
また、私は竜宮城に友人が居ます故姫に一筆したためていただくことなどたやすき事なのです。
猟師達が上手くやることを祈りながらも、少し歩調を上げましょう。
人間の頭の良さは感服に値するものですが、手負いの草食獣は火事場の馬鹿力を発揮するものですから。

三里地点に到着しましたが、ここでも兎の姿が見受けられませんね。
しかし、先に行かれた形跡もありません。
まこと、奇っ怪ですな。
しばらく待ってみましょう。
ああ、ですが眠気は大敵ですので身体は動かしておきましょう。

一刻(約30分)程待ってみましたが、来る気配がありませんね。
仕方ありません、先に行きましょう。
しかし、四里地点にはトリモチを仕掛けて置いたので避けなくてはなりませんね……おや?
ふむ、もし今私が兎に見張られていたなら、兎は私が仕掛けた罠を避ける事が出来ますね。
そして、私が罠を仕掛けていないゴール手前で抜きに掛かれば、私に勝つ術はありません。
なるほど、単なる若造と侮っていましたがなかなか機転が利くようです。
しかし、やはりは若造。
万年生きる私ら亀の英知と経験に勝ろうとはいやはや笑いぐさです。
ならば、二重に罠を仕掛けて差し上げましょう。
今度ばかりは、命の保証をしかねますが無事であることを祈りましょう。

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