《MUMEI》

汚染され何時しか狂乱と成り、私に返って来た。
貞二は松子を愛故に恨み、松子は愛故に猫の理想の“先生”を作り上げ、晶代は作り上げた艶子を絶望の中で濁らせ、光次は絶望の淵で私を恨んだ。


輪廻の如く廻る世界に私は猫を飼う。


そして、傍観を選んだ私は猫に“艶子”の思い出を聞かせた。
私は猫に文字を教え、先生と艶子の想いを口にし、其れを猫に書かせた。
文字は刻印のように身体に刻まれる。猫を飼い、愛を覚えた私は同時に裏切りを覚えた。

男女の肉慾の婬らさに失意し、私は計画を立てることにする。
瑤しく育て上げたものが欠けてしまうと、粉々にしてしまいたくなる。
其れは指先で突くと崩れ去る脆い砂の城を自らで倒壊させたくなる衝動にも似ている。

前へ |次へ


作品目次へ
感想掲示板へ
携帯小説検索(ランキング)へ
栞の一覧へ
この小説は無銘文庫を利用して執筆されています。無銘文庫は誰でも作家になれる無料の携帯・スマートフォン小説サイトです!
新規作家登録する

携帯小説の
無銘文庫