《MUMEI》
「オレだって今宵ちゃんのこと守りたいんだよ!!1人で抱え込むな!!」
歩雪は真剣な顔をした紘に顔を向けた。
「あたしだって嫌いじゃない子を放っておけないわよ!!」
こんなこと思ったの、初めてなんだから、と秋葉は呟く。
歩雪は2人を見て、口を開いた。
「そうしてくれると助かる。その内、自分から話すと思うから、その時まで待っててやって」
「あたりまえだろ!!」
「しょうがないわね」
今宵を守るのはオレだけでいいと思ってた。
けど、この2人ならいいかもしれない。
この2人といれば、皆が笑えると思うから。
オレがいつまでも笑っていて欲しい幼馴染で、ずっと隣にいて欲しいと思う奴も。
「ひぁ〜!!遅くなってごめんね〜!!」
教室のドアが、さっきまで話の中心だった本人によって開けられた。
3人が今宵をまじまじと見つめている。
あれ?皆静かだね。
「何かあった?」
不思議に思い今宵が尋ねると、紘がふっと顔を緩めた。
「やっぱ今宵ちゃんは今宵ちゃんか!!」
「何それ?」
どういう意味だろ?
今宵は紘の言葉に、小首を傾げる。
秋葉も紘の言葉に賛同して、顔を緩めて今宵突っかかった。
「遅いのよ!!ずっと待ってたんだから!!」
「うわわわ!!だって先生が、これでもかってぐらい雑用押し付けてくるんだよ!?」
何なんだ、皆して・・・本当に大変だったんだから!!
今宵は的外れなことを思った。
「ほら、帰るよ。加奈子さんが待ってる」
歩雪の発言を聞いて、紘と秋葉はそれぞれの反応を見せた。。
「へ〜〜!!【加奈子さん】って神瀬の彼女?やるなぁ〜!!」
「加奈子さんってことは年上なのね!!歩雪くんって年上趣味なの〜!?」
「何言ってんの、あんたら。特に琴吹」
「何でオレだけなんだよ!!」
紘は歩雪に鋭い視線睨まれて、僅かな抵抗をした。
「そんなのコトが気に入らないからに決まってんじゃない」
「秋葉ちゃんも酷い!!」
紘は秋葉からも精神的な攻撃を受けて、1人打ちひしがれた。
何があったんだろう、この3人。
いつのまにかすごく仲良くなってる。
歩雪くんが他人にこんなに絡んでるの見るの、初めてかも!!
今宵は3人を見ながら口元を緩めた。
「加奈子さんは私のお母さんだよ〜!!」
「じゃあ・・・神瀬、お前・・・。今宵ちゃんのマミーと付き合ってたの!?」
「琴吹、何か言った?」
「イイエ、トンデモアリマセン」
歩雪にさっきよりも痛い視線でにらまれ、紘は降参、というように両手をあげた。
「こー。帰るよ」
「あんな奴ほっといて、早く行くわよ」
歩雪と秋葉は何事も無かったかのように、今宵に声をかけた。
「うん!!」
「あ、酷くね!?」
出遅れた紘が3人に追いつく。
こんなに賑やかなの、久しぶりかも!!
出会ったのが初めてなんて、嘘みたい!!
今宵は今の幸せを噛み締めていた。
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