《MUMEI》
メッセージ
加奈子は食い入る様に見ていた。

「犯人が最期に言ったあの言葉、一体どう言う意味なのでしょうか?」

アナウンサーは、隣に座る白髪混じりの中年男性に話を振る。

有馬 貞夫
大学病院 精神科医


画面の下に、男の名前と何者かを報せる文字が出ていた。

「精神科医…」


まぁ、当然の人選か。


加奈子は一人呟く。

「そうですねぇ、私の見解では、この男が薬物使用者だという事もあり、何らかの幻覚を見ていたのではないかと…」

有馬貞夫は腕組みをしながら、厳かに答える。

「何かのメッセージとは考えられないでしょうか?」

アナウンサーは更に突っ込んだ質問をぶつけたが、

「それはないでしょうね。薬物乱用者の言葉など、何の信憑性もありません!」
即座に、しかもキッパリと有馬貞夫に否定されてしまった。

「そうですか。有馬先生有難うございました。この事件は、新しい情報が入り次第、追ってお知らせ致します。
では次の話題です。」

アナウンサーが言うと、今度は全くギャップのあり過ぎる軽快なメロディーが流れだした。

きっと明るいニュースなのだろう。

興味の失せた加奈子は、テレビの電源をオフにして、先程のアナウンサーの言ったセリフを思い返していた。


『何かのメッセージではないでしょうか…』


“メッセージ”ねぇ…
確かにおかしな言い回しよね…。

モルモット… 吸血鬼…
リアルは月夜に甦る、か…


「う〜ん、シュウちゃんどう思う?」

修二が居るであろう場所を加奈子は振り返り見た。

「あれ?…シュウちゃん?」

しかし、そこに居たであろう修二の姿はいつの間にか消えていた。

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