貴方の中の小悪魔
を知る神秘の占い

《MUMEI》
好きだった人。
あれから1週間、

特に変な人が訪れたりはして居ない。


わたしはアキに詳しいことは聞けず、きっと昔の彼氏か何かなのだと思うことにした。


…そういえば、アキと暮らし始めて数ヶ月経つけど、恋愛の話題って数えるくらいしかしてないな。

わたし自身、周りはあんな家族だし、中学の頃から大学受験に向けて学校に行ってたから、恋するヒマも無かったってのもあるけど。


「ねぇアキ、今までで一番好きになったのはどんな人?」

「……はぁ!?」

洗い物をする手が止まって、お湯だけが蛇口からザーザー流れる変な沈黙が訪れる。


「ちょ、ちょっと待ってて」

残りのコップをゆすぎ、手を洗ったアキがわたしの前にちょこんと正座する。


「あのさ、そういうのは云い出しっぺが先に披露するんじゃない?」

いつもよりも目を3倍くらいキラキラさせたアキが、わたしをニヤニヤと覗き込む。


「…いいよ。あれはね…」

わたしが語ったのは、幼稚園から小学4年生までずっと片思いして居たユウくんの話。

結局、彼が遠い町に引っ越してしまったことが原因で散った儚い恋だったけど、その後のわたしの環境からも考えて、これが一番好きになった人のエピソード。


「アキの話は?」

今度はわたしがニヤニヤしてアキを覗き込む。


「か…、語るってば」

すぅ…と息を整えてアキは語り出す。

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