《MUMEI》
まずは、食事
意外な事に、開始直後から、出席者達が移動する事は無かった。


恋人同士や夫婦でイチャイチャしたり、同僚や友人との会話に夢中になっている様子はあるが


基本的に、皆食事に集中していた。


特に食事のみに集中していたのは祐で


屋代さんと厳は、無理矢理食事だけに集中しようとしているように見えた。


食事は中華のコースで、後で出されるデザートのケーキ以外は、各テーブルのペースに合わせて出されていた。


その結果


「よし!終わった!」


一番に席を立ったのは、拓磨だった。


(あそこ運動部の連中多いからな)


唯一スローペースな吉野は、自分の料理を守に少し分け与えていた。


(守が『うまい!』ばっかり叫んでたしな)


それは、皆に合わせるというより、守があまりにも美味しそうに食べていたからだった。


「志貴さん!」

「先に祐也に挨拶でしょ? あと、他の二組にも」


まだ食べ終わっていない志貴は食事に集中したい様子だった。


「オメデトウゴザイマス」


棒読みの拓磨に俺は苦笑したが


他のバカップル二組は全く気にしていなかった。

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