《MUMEI》 「“賢史がいないと勝てない”。 俺にはそう聞こえたんだけど?」 一希は、怖い顔で周囲を見渡す。 周囲は、一瞬にして静かになった。 「さっきから見てたらよぉ……。」 彼は一人一人の顔を、凝視しながら語り出した。 「全部賢史に任せてないか?」 「ち、ちげーよ!! そう言うつもりじゃ……。」 周囲のうちの一人が、一希に反論する。 それに吊られて、次々と反対の声が上がった。 「じゃあどう言うつもりだったんだ?」 彼は静かに、だがよく通る声で言い放った。 そのとてつもない威圧感に周囲は圧倒され、またもや静寂が訪れる。 「賢史が智哉にマークされた時、何故パスを受け取ろうとしなかった?」 更に彼は、神妙な面持ちで続ける。 「智哉が副キャプだから? 実力の差がありすぎると思ったから? 自分には敵わないと思ったから?」 長い沈黙が続いた。 「図星かよ。」 前へ |次へ |
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