《MUMEI》

「ぬぅ……強くなったな、グレイド。」


「まあな。

だてに鍛えている訳じゃない。」


ラルフはゆっくりと立ち上がった。


二つの頭の額から、血がぼたぼたと零れ落ちる。


ただでさえ、狼のような怖い表情をしているのに、流血のせいでより恐怖感を覚える。


その表情が、突然こちらを向いた。


「ひっ!!」


咄嗟にのけ反る。


「ハッハッハッ!

いきなり取って食いはせんよ。」


その動作を見て、ラルフは笑った。


「今日はグレイドに免じて通ってよかろう。」


翼を広げ、何処かへ飛び去ろうとする。


「ちょっとまて。」


「なんだ?」


グレイドが呼び止め、ラルフは空中で静止し、振り返る。


グレイドはラルフを耳元まで手招きすると、何かを言ったようだった。


俺も聞きたかったが、大事な事なんだろうと思い、聞かないようにしていた。


ラルフは次第に目を広げて行く。


「なんと!?」


そしてグレイドとの話しを遮って、驚きの声を上げた。

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