《MUMEI》

車内。


疲れていた3人だったが、


話は止まらない。


それだけ今日の試合に興奮を覚えていた。


猪狩もどこか楽しそうだった。


特に何があった訳でもないが、


一瞬会話が途切れる。


次に会話を切り出したのは恭介だった。


「なぁ猪狩?」


「なんすか?」


「お前ホントに海南入んの?」


「…今更なんすか?」


「や別に。」


「気になるじゃないすか。
言ってくださいよ。」


「いや〜、
俺がクロだったら強引にでもチームに入れるけどなって思って。」


「…」


少しの間、


猪狩は黙った。


クロが空気を察し、


話題を変えようとした時だった。


「今更あいつらとやる気はないす。


別に俺は高校ハンドボールに拘ってないし。


どうせなら強いとこでやりたい。


だから、


海南クラブで満足してんすよ。」


「…そっか。」


それからまた、


3人の会話は進み、


猪狩を自宅付近で降ろした。


「んじゃ、


またな!!


今日はホントにありがと!!」


「…別に。」


「今度から海南の練習にも来いよ。
迎え行くから。」


猪狩は黙って頷く。


そして帰ろうとした。


「猪狩!!」


その猪狩を、


クロが呼び止める。


「これからもよろしくな!!」


そう言ってクロは手を振った。


猪狩はそれを無視して帰るが、


表情は笑っていた。

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