《MUMEI》

「知っているか?夜中……丑の刻に五寸釘を打つ女が居たら気をつけなければならない。
何故なら人を呪っているからだ、呪っている姿を見られると呪いは自分に返ってくる。呪いを避ける方法はただ一つ。」

兄さんは突然、歩みを止めて俺を見た。


「ひとつ?」





「見た人間を殺すのさ。」

月明かりの反射で兄さんは不気味に照らされた。


「兄さん……?」


「木に貼付けられている藁人形の釘で打ち付けられる音が聞こえないか?嗚呼、違うな……呪者の足音だ。ホラ、近付いてくる。」

確かに、葉が擦り合わさる音とは別の重みのある音がした。


「うわあああ!」

俺は森の奥へと走った。
釘を刺されると思ったからだ。
いつの間にか小屋まで走っていた、小屋にはそう、天狗が居る。
少し、安心した。

俺は扉に手を伸ばしたが、話し声が聞こえて反射的に静止する。
すると、脳が揺れるような衝撃を受けた。
後ろから不意を付かれ、意識は遠退く。

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