《MUMEI》
プロローグ
  
「くるみどうした、アホな顔して?」
「オ〜…ファータとムッタァだよ、忘れたのかい?」

 くるみちゃんが突然帰ってきたパパとママを見上げて、固まったまま呆然とその場に立ち尽くしていた。

「まっくんに…さくらたん、いなくなったんじゃないのぉ?」
「帰って来たんだよ」
「バカンスの間、お兄ちゃん達に迷惑かけてなかったぁ〜?」

 克哉さんをかなり優しくしたような見た目のお父さんは、ポカーンとするくるみちゃんを抱き上げて嬉しそうにはしゃいでいた。

 一方、ちょっと恐そうな”さくら”と呼ばれたお母さんの方は、部屋に入ってくるなりそのままドカッとソファー座り、履いていたハイヒ

ールを半分脱いでブラブラさせながらリビングで寛いでいた。


 僕がお茶の準備をしている間、パパの方はくるみちゃんとそっくりな金髪の頭をくっつけ合いながら、大喜びしているくるみちゃんにいっ

ぱいキスをしていた。

 あのサラサラな金髪で、華やかで綺麗な人がくるみちゃんのパパであり、克哉さんのパパなのか…。

 それで…こっちの可愛らしいと言うより格好良くて日本の女性にしてはスタイルのいい女性がお母様か。

 二人とも全然克哉さんぐらいの成人した子供がいるような年齢には見えなくて、多分僕の両親と同じくらいの年齢だと思うのだけど全然若

く見えた…。

 そう思いながら克哉さんのご両親をキッチンから眺めていると、ふと斜め横に居た克哉さんの視線を感じた。

「どうしました?」
「いや、すまないな…」

 克哉さんは僕の傍まで来ると、向こうに居るご両親に聞こえないように僕にこっそりと耳打ちしてきた。

「妙な両親ですまないな…」
「いいえ、そんな事無いですよ」

 僕はそんなパンチのあるご両親にはビビってないですよ、というようにニコッと克哉さんに笑ってみせた。

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