《MUMEI》
意地悪マッサージ
静果が恥ずかしがっていると、自然な演技で女優の一人が言った。
「ではお客さん、ベッドに仰向けに寝てください」
「仰向けですか?」
もう撮影は始まっている。静果は緊張で顔が赤い。
彼女が仰向けに寝ると、エステティシャン役の4人は、すました顔でマッサージを始めた。
8本の手が全身をくまなくマッサージしていく。たまらなく気持ちいい。静果は口を真一文字にしている。
全身攻撃のあとはローションをおなかに垂らし、おへその周辺を攻めてきたかと思うと、別の手は内股や下腹部をマッサージ。静果は慌てた。
(嘘、ガチ?)
本気で性感マッサージをされるとは思わなかった。静果は息づかいが段々と荒くなる。
秘部周辺を4人がかりは卑怯だ。静果はたまらず脚を動かし、腰を浮かした。
「どうしました、さっきっからもじもじして?」
「あ、ちょっと、くすぐったくて」
「我慢してもらいますよ」
「我慢できない場合はどうするんですか?」
「我慢してもらいます」
静果は参った。このセリフのやりとり。自分が書いた小説そのものではないか。全く文句は言えない。
時間が経つにつれて快感は高まる一方。今度は水着の上から、いちばん敏感なところに手を触れた。
「ちょっと!」
静果が手を出すと、今とばかり4人は手足を掴んだ。
「マッサージの邪魔するお客さんは縛ることにしています」
手足を押さえつけられたので、静果は慌てて言った。
「わかったやめて、手出しませんから」
「ダメです」
容赦はない。強引にベルトで両手両足を固定されてしまった。
静果が無抵抗なのをいいことに、胸と秘部を8本の手指が攻めまくる。
「ちょっと待って、そんなことしちゃダメ」
慌てふためく静果の姿を面白がりながら、本気で攻めた。
「待って、何やってんの?」
静果が真っ赤な顔で女優の一人を睨んだが、女優は意味ありげに笑っている。
(まずい)
不覚にも本気で感じてきてしまった。やめさせないと危ない。静果は困り果てた。
「ちょっと、やめてください」
「何でやめなきゃいけないの?」
「いいからやめてください」
「やめないよ」
「あっ…」
静果は思わずのけ反った。
「あらら、もしかしてお客さん、ヤバいことになってる?」
「ヤバいこと?」
「つまり、イッちゃいそうなの?」
「まさか」静果は横を向いた。
「どうする、許してあげる?」
「バカね、意地悪するに決まってんじゃん」
「ふふふ。やっちゃう?」
4人は本気で下半身と胸を攻めた。
「あああ!」
静果は暴れた。しかし構わず本気で攻めまくる。
「待ってください、待ってください!」
静果も本気で哀願したが、皆聞く耳を持たない。絶体絶命の大ピンチだ。耐えられない。
(どうしよう!)
火竜や塚田が見ている目の前で本当に昇天したら恥ずかしい。それだけは絶対に避けたかった。
だが、同じ女である4人も、それがどれだけ恥ずかしいかを知ってて意地悪をしている。
「やめてください」
本気でお願いしても通じない。恥をかかせて面白いのか。
「あん!」
ダメだ。どうにもならない。耐えられない。
「嘘、この子限界かもよ」
「意地悪しちゃう?」
「当たり前じゃん。赤っ恥かかしちゃおう」
「やめて」
静果の表情も声も色っぽい。興奮をさそう。
「許してほしい?」
「許して」
「わかった、じゃあ許してあげる」
許してくれた。
静果は汗びっしょりかいて、打ちのめされた顔で息を乱している。
「カット!」
火竜も塚田も満面笑顔でベッドに歩み寄った。
「静果チャン、演技うま過ぎ」
「演技じゃないよ!」静果がふくれた。
「え?」
火竜が視線を静果から4人に移すと、彼女たちは笑いながら言った。
「自分よりかわいい子は、ついつい意地悪したくなるの」
「ダメだよ本気でやっちゃあ」
火竜は優しく静果に聞いた。
「大丈夫か?」
「ダメ」
ノックダウンだ。

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