《MUMEI》

徳山との距離が40センチあるかないかまで縮まると、徳山は気を使ってくれたのか、その位置で止まった。
私は内心ほっとする。

「なぁ、田中さ、最近拓也とよく一緒にいるって聞くんだけど?」

徳山はなぜか少し怒っているように見えた。
何なの…一体…

「まぁ、よくでもないけどたまに一緒にいるけど?」

「ふーん…男嫌いなのに?」

少しからかったような口調で聞いてくる。

というか、私が男嫌いって分かってるなら、今日はまだしも今までの距離の近づけ方はなんなわけ?


「まぁ向こうも女嫌いだから気が合うっていうか…てかあんた成田と同じ部でしょ?ちょっと考えれば分かるんじゃないの?」

だんだんといらいらし始めた。
何がしたいのか分からない。

「まぁ俺と拓也はよく一緒にいるから分かるけど…直接あいつから聞いたことないしなぁ…。」

考えるふりをした徳山は私の方をちらっと見た。


ここで、「やばっ、ドキドキする。」っていうのがファン及び一般の反応なんだろうが、私はいまいち理解不能。
むしろ、わざわざこっち見んなって感じ。


今までそっと二人の様子を眺めていた綾音が、徳山の肩に手をおく。

「徳山、怜困ってるよ。それに掃除早く終わらせないと。」

そう言って、徳山を元の場所に戻す。
徳山は私のほうを少し見ると、掃除にとりかかった。
徳山が悲しそうな顔をしていると思ったのは、私の気のせいだろう。


しかし、綾音が自分が徳山を独り占めにしたいという欲望があったのかもしれないが、いい感じのタイミングで仲介に入ってくれた綾音に私は感謝した。

前へ |次へ


作品目次へ
感想掲示板へ
携帯小説検索(ランキング)へ
栞の一覧へ
この小説は無銘文庫を利用して執筆されています。無銘文庫は誰でも作家になれる無料の携帯・スマートフォン小説サイトです!
新規作家登録する

携帯小説の
無銘文庫