《MUMEI》

「う〜ι…おりぇ赤ちゃんじゃないも〜ん…」

 だだっこを言いながらもさくらさんの方を気にしていたくるみちゃんは、僕の顔を覗き込むと覚悟を決めたようにギュッと抱きついてきた



「……わかったぁ…おっぱい…やめる…おにーちゃんになる」

 名残惜しそうに僕の胸の辺りを撫でると、僕の胸に顔を埋めながらまたギューッと僕に抱きついてきた。

「えらいね…お兄ちゃんだね…」

 そんな愛らしくてミルクくさいくるみちゃんを僕もギュッと抱っこした。

 その僕らの様子を、さくらさんはニコニコしながら眺めていてくれていた。

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 久しぶりに以前まで住んでいた実家へ帰ると、すでにいくつか俺達が昔使っていたような懐かしい玩具やくるみの服を色々と引っ張り出し

ていて、すでにある程度持って行く用意が出来ているようだった。

「どういう事だ…」
「そーゆー事だよ〜くるみをキミ達に任せようかと思ってね、ほら、克哉が使ってた日本のオモチャだよ〜懐かしいなぁ♪」
「やっぱり…くるみを俺達に任せることを決めてたんだな」

 俺が高校生の頃、こっちの大学へ行く為にドイツに帰ってきたと同時にまるで狙ったかのように出来た赤ん坊のくるみ。

 その面倒はなぜかほとんど俺が見ていたようなものだし、両親もくるみが成人する頃にはある程度の年齢になるので俺が引き取ろうかと思

っていたので、親権譲渡には丁度いい時期だったのかもしれない。

 アンティークな部屋には似つかわしくないような可愛い子供服が並ぶと、それを一緒にいたメイドが端から荷造りをしていっていた。

「かなたからの電話で聞いてたよ、お兄ちゃんにすごく美人な恋人が出来たんだって」

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