《MUMEI》
カンパン
ユウゴが向かったのは、住宅街から離れた場所に立つ大きな倉庫だった。
「なに、ここ?」
ユキナはさらに不思議そうな表情でユウゴに聞いた。
「見てわかんねえ?倉庫」
「……からかってんの?」
「いいから、入るぞ」
言ってユウゴは、倉庫の入口へ向かった。
入口には南京錠で厳重に鍵がかけられている。
やはり、まだ荒らされてはいないようだ。
「ちょっと下がってろ」
ユキナを後ろに下がらせ、ユウゴは銃を構えた。
狙いを定めて引き金を引く。
倉庫街のためか、ひどく音が響いた。
ユウゴが緩んだ錠を何度か殴ると、ガギっと音をたてて壊れた。
「よし」
一人頷き、ユウゴは両開きのドアをゆっくり開ける。
中は薄暗い。
壁にスイッチを発見し、電気を点けてみた。
パッと明かりが倉庫内を照らし出す。
「うわー、何、これ?」
ユキナの声が響いた。
倉庫の中には整然と棚が列んでおり、その棚には段ボールが積み上げられている。
さらに奥には米袋も見える。
「ここって何なの?」
「この町の備蓄食料」
「備蓄?」
「どこの町にもあるだろ?災害とかの時のために食料をいくらか確保してる倉庫。ここが、それ」
ユウゴが得意げに箱の一つを開いた。
中にはカンパンが詰まっている。
「へえ。よく知ってたね」
「だろ?ってことで食おうぜ」
「……カンパン?」
「を、腹一杯」
ニマっと笑みを浮かべてユウゴはカンパンの袋を開けた。
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