《MUMEI》

鏡を片手に、カチンカチンに固まっているわたしの顔を、先輩がひょいと覗き込む。

「大丈夫?顔色悪いよ?」

やっぱり具合悪いの?と心配そうに聞いてきた。すかさずわたしは額に手をあててさりげなく麿眉毛を隠し、弱々しい声で、実は…答える。

「ちょっと朝から調子が……」

ふらりとよろめいて見せると、先輩は言った。

「とりあえず、コーヒーショップに入ろうか。少し、休もう」

先輩の提案でわたしたちは目の前にあるコーヒーショップに入った。


「いらっしゃいませー」とやる気のない店員の挨拶にむかえられながら、わたしたちはテーブル席につく。

「何か飲み物買って来るよ。座って待ってて」

そう言われた。

でも、それよりも早くこの麿眉毛をなんとかしなければ……っ!

わたしは眉毛を隠したまま、ちょっとトイレに行ってきます……と先輩に言うと、彼は快く頷く。

「それじゃ僕は、飲み物用意しておくから」

弱々しくほほ笑んでから、わたしは猛ダッシュでトイレに駆け込んだ。



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