《MUMEI》

「お帰り。
ご飯できてるわよ。」


「うん。
着替えたらすぐ食べる。」


母と姉の会話が聞こえる。


そして、


姉が階段を上る音も。


コンコン。


恭介の部屋のドアをノックする春奈。


「…なに?」


「…入っていい?」


「…別にい〜よ。」


ガチャッ…


ドアが開く。


「手…
大丈夫?」


「痛て〜けど、
ケガとかではないと思う。」


「そっか…
顔は?」


「平気。」


「そう…。」


「それだけ?」


「いや…


あの…


あのね?」


「何?」


「…今日は、
ホントにごめん!!」


「…は?」


「川上があんなことするなんて思わなかった…。


痛かったでしょ?


ごめんね…。」


「別にい〜よ。


つ〜か、


結局俺たちが勝った訳だし。


そこが良ければ俺は満足っていうか…」


「…ごめんね。」


「だからいいって。」


「そっちじゃなくて…。」


「はぁ?」

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