《MUMEI》
一番のことは
俺はいたって平凡だ。
名前も木下二郎という、しかも次男だ。

名前はつまらな過ぎて忘れられがちだが別に困らないし、むしろ平凡な生活に満足している。

まあ、そう思うのは身近に例があるからで……。

「じーろー!待てよ後ろ乗せてって!」
背中に圧迫感、ああ一例が勝手に自転車に乗っかってきた。

「フー、危ない危ない。」
恐らく、お前は出席日数含めの危険性を表しているのだろうね。
この朝から騒がしいのは内館七生という。四歳からの腐れ縁で、高校二年にあがっても今だに同じクラスというもはや呪いに近い状況だ。
余談だが、この呪いは一人だけではない。



「おはざーす!乙矢」


「おう。」
七生の騒がしさに眉を潜めている彼が、呪われし者の最後の一人、美作乙矢だ。

俺達は三人、隣同士、同じクラスで家も学校も顔付き合わせっぱなしで兄弟みたいなものだ。
実際、俺達の父親は学生時代からの友人で特に内館家と美作家は交流が深く、二人の付き合いは産まれた時からと根強い。
俺は四歳になってから七生のアパートの隣に引越してきた。


「七生、後ろで五月蝿いよー?」
ギャーギャー鳴く奴を振り落とそうとフラフラ運転した。

「いやめて!
ひでーよ、二郎がいぢめるよう」

「自業自得だな」
乙矢のズバリなコメント。

こんな他愛もない会話が続くチャリ登校も中々悪くない、なんて思っている。

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