《MUMEI》 . 席に戻るなり、先輩は心配そうな声で尋ねてきた。 「大丈夫?」 わたしはニッコリほほ笑みながら、椅子に腰掛ける。 「ごめんなさい……もう、平気です!」 先輩は、ホントに?と疑いの目をむける。 「無理しないでいいんだよ?今日はやめておこうか…?」 わたしは身を乗り出して、先輩に顔をズズイッと近づけ、イ・ヤ!!と区切るように言った。 先輩は戸惑ったように、でも……と呟いたが、わたしは首を左右に振る。 「せっかく、せっかく先輩と一緒にデート出来たのに……」 ウルッと瞳を潤ませた。先輩はわたしの表情に、思わずドキッとしたようだった。顔を赤らめている。 ………よぉしッ! とりあえず、掴みは上々だな! わたしは先輩が買ってくれたりんごジュースを飲み、ふたたび明るい表情を浮かべて言った。 「そろそろ、先輩オススメのレストランに行きましょうよ!」 そう言うと先輩は戸惑いながらも、わ、わかったよ…と頷いた。 . 前へ |次へ |
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