《MUMEI》
志貴の功績
(そういえば…)


「なぁ、志貴」

「何? 祐也」

「邪魔すんな祐也」

「黙って拓磨」

「はい」


拓磨はさりげなく俺を睨みながらも、静かになった。


「で、何?」

「あ、あのさ。さっき秀さん『祐以外』って言っただろう? だから、志貴も何かあるのか?」


(うっかり納得しちゃったけどさ)


俺の誕生日のように


柊と希先輩の交際一周年記念日のように


頼とエイミーの交際公開のように


志貴にも何かあるのかと思った。


(誕生日は違うし、恋人も、いないみたいだし)


俺はその何かが全くわからなかった。


「あぁ…確かに私は誕生日じゃないし、恋人もいないしね。

今のところ、できる予定も全く無いし」


(た、拓磨、ドンマイ)


『全く』を強調した志貴を見て青ざめる拓磨を、俺は心の中だけで慰めた。


「あのね、私が初めて仕入れた新人ブランドが評判良くて、今月のお店の売り上げにかなり貢献したの」

「へぇ…」

「おめでとうございます!」


(復活早かったな)


拓磨は、先程と違い、心からの祝いの言葉を述べていた。


「おめでとう、志貴」


もちろん俺も心から、そう言って微笑んだ。

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