《MUMEI》 ケーキ入刀「祐也、そろそろケーキ来るから戻って!」 「あ、うん。今行く!」 重役達からかわるがわる名刺を渡されていた俺は、志貴の声に慌てて席に戻った。 (で、デカイ…) ワゴンに乗せられてきた長方形のケーキを見て、俺が思ったのはそれだけだったが 「「ウェディングケーキみたい…」」 希先輩とエイミーが同時に 夢見る乙女の顔で呟いたのを… 「「じゃあ、ケーキ入刀する?」」 柊と頼が見逃すはずは無かった。 「年上に譲れよ」 「嫌だね。こっちはもう婚約確定なんだから、リハーサルさせろよ」 「こっちだってなぁー、結婚するに決まってるだろ!」 「けどすぐじゃないじゃん」 「お前だってそうだろ!」 「俺はいいの」 … 二人は互いに一歩も譲らなかった。 そして、結局 「それでは、ケーキ入刀です!」 茶化すような祐の言葉にナイフを手にしたのは… (何で俺が…) 何故か、俺、だった。 ため息をつきながらケーキ入刀を済ませた俺の肩を志貴が叩き 「忍さん、…来れなくて残念だったわね」 そう言って、…励ました。 俺は、苦笑するしかなかった。 前へ |次へ |
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