《MUMEI》

「なに…よ、そんな風に、言わなくたって…、ひく……、」
俺の目の前でまた彼女が瞳を潤ませている。その時、オレはようやく自分が彼女を追いつめていたことに気付いた。

「……すまん。ちょっと頭冷やしてくる。」
二人にそう伝えベランダにでた。

がらがらがらっ

窓を閉めて手をにぎる
「なんなんだよ、この感覚は…。」
オレはいつになく興奮していた。他人の悪意を敏感過ぎるほどに感じ、それをくじくことを心の根っこが欲していた。

「…お前は…誰だ?」

そう自問した。


〜RIN'S VIEW〜


「……ケンは私のことなんかどうでもいいのよ、どうせここにきたのも私をからかうためなのよ。」
そうに決まってる。助けに来てくれたと思って泣いた私がバカみたい。

「それは、違うよ。リン。」
それまで黙っていた加藤が口を開いた。

「違わないわよっ!」

「……ねぇ、リン。表に倒れてるゾンビを見たかい?」

「見たわよ、あれがどうしたっていうの?」
確かに、ゾンビが一人倒れていた。あの時は気が動転してて気にも留めなかったけど。

「ケンがね、殺したんだよ。」
加藤は静かに話した。

「え?」

「ケンはね、今朝僕と会ってから彼を殺すまで一人もゾンビを殺していないんだよ。多分、会う前もね。」

「っ!」

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