《MUMEI》

「朝状況を調べに行ったときも逃げるだけだったし、車を運転してるときもなるべくゾンビに当てないようにしてた。……その分、塀や他の車にぶつけてたけどね…。」

「う…そ?」

「ほんとだよ。一人も殺さなかった。少しの敵意も持たなかった。彼らを人として扱っていた。」

「……そんなケンがね、ためらいもなく殺したんだ。リンの部屋にゾンビが押し入ろうとしているのを見てね。」

「そして彼に謝ったんだよ、すまないって、この中には仲間がいるんだってね。…………涙を、流しながら。」

「…ケンが……泣いた?」
あのいつもバカみたいで、やることはもっとバカで、暗い顔なんて見せたことがないヤツが?

「ケンは仲間をなにより大切にする。絶対に見捨てない。仲間が困って泣いていたらすぐに駆けつけるんだ。……バカな理由をつけてね。」

「…………」
『お〜い、り〜ん、遊びに来たぞ〜。』

「これだけは分かっておいて欲しい。君はケンにとって大切な仲間なんだ。どれだけ危険でも、どれだけ辛くても、君を守ろうとすることをいとわない、そんな存在なんだよ。」

「そ…んなの、言ってくれなきゃ、わかんないわよ……。」
ズルいよ、そんなの聞かされて嬉しく無いわけないじゃない…。

「不器用だからね、ケンは。だから、こうやって僕がフォローしなくちゃいけなくなるんだ。」
苦笑する加藤を見て、私の心にも暖かいものが流れてくるのを感じた。

〜VIEW END〜

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