《MUMEI》

瞳子さんはお嬢様でどこか浮世離れしてると思っていたが。

あ、悪夢……!
前に瞳子さん、右に神部、左に七生という悪夢だ。
悪気が瞳子さんに無い分、厄介だ。

俺のプライバシーそっちのけ……瞳子さんは一人より二人、二人より三人という思考らしい。


「思い詰めている恋人を助けたいと。」

神部は瞳子さんの熱弁を聞きながら紅茶片手にまったりしていた。
なんか、こなれてる?


「是非、男性視点からも二郎さんの恋の手助けをしてあげましょう!」

瞳子さんと俺達に温度差があるような。


「恋人は?」

七生が静かに口を開く。
瞳子さんがあまりにも懸命に話していたのでお茶にも手を付けずに真っ直ぐ俺を見ていた七生の存在は薄れていた。


「一つ年下のしっかりした方で……」


「うん。だからさ、言ってみた?」

七生は瞳子さんの会話の隙間を縫って俺に質問してくる。
質問よりも、詰問みたいだけれど。


「……言う?」







「好きだ」

七生の視線に貫かれた。


「へ……」

上手くリアクション取れない。


「好きだから支えたいって、愛情表現した?」

あ……なんだ、相談に乗ってくれていたのか。
あれ……?
なんだって、なんだ!?


「口にしないと伝わらない、口にすればなんでもないようなことかも。」

真摯に話してくれているのに俺の馬鹿。

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