《MUMEI》

松本先輩は声を強めて、言った。


「僕は、君のこと……っ!!」


「お待たせいたしました」




ギャルソンがサラリと先輩の言葉を遮った。わたしたちは同時にギャルソンを見上げる。
ギャルソンは素知らぬ顔で、オーダーした料理のプレートを、わたしたちのまえに置き、失礼いたしました、と頭を下げてさっさと引っ込んだ。



沈黙がわたしたちを包み込む。




………チッ!

良いところだったのに……邪魔しやがって。




わたしは毒づいたが、ひとつ深呼吸をして気分を入れ替える。




………まあ、いいわ。

《メイン》はあとに回さないと、つまらないもの。

まだまだ、時間はあるのだし……。




わたしは、ほうけている先輩の顔を見つめ、ニッコリした。

「いただきましょうか。料理、冷めちゃう」

わたしの声にハッとして、先輩も笑顔を見せた。

「そ、そうだね!食べようか!」

わたしたちは、優雅においしい食事を堪能した。



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