《MUMEI》

私は、いらいらしながら学校を出た。
このいらいらを誰かにぶつけたかった。
ふと、成田の顔が浮かんだ。


そういえば、最近話してないっけ…


携帯を取り出し、メールする。


『暇?ちょっと聞いて欲しいことがある。』


返事はすぐに返ってきた。


『いいけど、今バイト中だから…夜遅くなるのはさすがにまずいっしょ。』


『バイト先は?』


『ラーメン屋。』


私は携帯を鞄の中にしまった。
思い当たる店がある。
憂さ晴らしに押しかけることにした。
このときの私は、ラーメン屋も十分というかむしろ危険な場所であるということを理解していなかった。



学校から歩いて30分。駅前のちょっと寂れた通りだが、なぜか人気の店がある。

どっこいらーめん

見るからにセンスの悪い名前の店である。
私は、引き戸を開けた。

「いらっしゃ−い。」

威勢のいい声に驚く。
目の前を見ると、たくさんのお客がいる。


やばい…最悪のところに来ちゃった。


今更戻るわけにもいかず、私は途方にくれた。

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