《MUMEI》
意外と不器用?
(凝ってるな)


三枚のチョコプレートが乗った純白のケーキの中にはいちごたっぷりで甘さ控え目なムースが入っていた。


「さすが母さんだな」

「…秀さんじゃなくて?」


誇らしげな祐に、俺は首を傾げた。


「秀さんはこういう、お菓子系はダメなんだよ。

だから、料理担当だし、うちの会社のお菓子部門もあんまり力入れてない。

これからは、…俺の代からは違うけどね」


(ちゃんと次期社長の自覚はあるんだな)


ほめると調子にのるから、俺は『そうか』とだけ答えた。


「いいな〜、志穂さんは料理上手で。…希だってお菓子作り上手だし」

「そうだね」

「そ、そんな…でも、いつか、…自分の結婚式のケーキは作りたい、かも…」


志貴と柊に言われ、希先輩は真っ赤になっていた。


[私だっていつか作りたいけど、不器用だし]

[俺が手伝うよ。柊より器用だし]


その様子を見ていた頼とエイミーは英語で周囲にバレないように語り合っていた。


(…あれ?)


[でも、柊、バレンタインいつも手作りだったぞ?]


気になって、俺は頼に質問した。


そして、俺がもらったのは何度も失敗して、ようやく完成した物だと知った。

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