《MUMEI》
第三章 変化
蝉の声が鳴り響く。
いつの間にか、もうすっかり夏になっていて、湿気で空気がベトベトしている。
そういえば、私の部屋のドアも閉まりにくくなった。

「あっちー。」

優子がスカートの下をうちわで扇ぎながら、低い声で言った。

「ちょっとー、中身見えちゃうよ?しかも、そんな足組んでさー…。」

私は顔をしかめる。

「えー?だって暑いし。」

「破廉恥な…。」

「あんた、その言葉…いまどきの若者が使うもんじゃないでしょ。」

優子が持っていたうちわで私をたたく。
私は頭をおさえた。

「あー、なんでうちの学校には、冷房がないわけ?」

「…公立だからじゃん?」

「うっさいっ。分かっとるわっ。」

妙にテンションが高い優子についていけず、私はさらりと流した。

「そーだ。明日、社会科見学じゃん。」

優子が思い出したかのように言った。

「博物館だっけ?めんどー。」

そう言うと、優子が急に私を睨んできた。
何なの?この子…

「何言ってんのっ。社会科見学って言ったら、いちゃいちゃできるんだよ?」

「…いや、そもそもそんな相手いないし。」

「まぁ、いちゃいちゃとかちょっとどうかと思うけど。」

どっちなの?

「ま、楽しみでしょ?たぶん、出席番号順に並んで見ていって、その後自由行動だと思うし…。」

「やだっ。並ぶってことは、普段より男子との密着度が高くなる…。」

私は断固として拒否を示す。
優子はそんな様子を面白そうに見つめる。

「さー、どっちと仲がよろしくなるかねー。」

「は?どっちって?」

「ふふふ…お楽しみ。」

そう言うと、優子はくしゃくしゃと私の頭をなでた。

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