《MUMEI》

大通り中心街。


大きな建物や映画館、
居酒屋が並ぶこの通りは、


大通りの中では珍しく交通量が多く、


夜になると若者たちが賑わう有名なナンパスポットだ。


とはいえ昼間の時間帯にはそんなことをしている者はまず見かけない…


「ね〜ね〜お姉さん。」


はずだった。


「ちぇっ…
また外した。」


沖修一。


久々の休みをこんなことに使っていたのは、


当然彼だけだった。


(クロさんがここはナンパスポットって言ってたんだけどな…


おかしい…


何がいけないんだ…?)


うろつく沖。


(おぉ!!)


また新たに女の子を見つけ近寄った。


「ね〜ね〜お姉さん!!」
「ね〜ね〜お姉さん!!」


(…ん?)


声が重複して聞こえた。


「あ?」
「あ?」


沖と同じタイミングに、


同じ女の子をナンパしている男がいたのだ。


「いやいや俺が先だし!!」


「いや俺っしょ!?
い〜からお前は別の子にしとけ。」


「うるせ〜よ!!
俺が先なんだからすっこんでろ黒人!!」


「いや黒人じゃね〜し!!
肌黒いだけだから!!」


「アフリカ帰れよ!!」


「いや日本人だし!!
自前自前!!
この肌自前だよ!?」


2人が口論をしている間に、


女の子は消えていた。


「はぁ〜!?
最低だよこのチ〇毛…。」


「いやチ〇毛じゃね〜し!!
髪!!髪!!
テンパバカにしてんじゃね〜よ!!」


「はぁ〜ウザいウザい。
もういいや…」


沖はその場を後にした。

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