《MUMEI》
三人を選んだ理由
祐がやってきたのは、俺達三人が部屋に入ってから三十分程経ってからだった。


「悪い、遅れた!」

「いや」


汗だくの姿が駐車場からどれだけ必死で走ってきたかを証明していたから、誰も祐を責めなかった。


「これで揃ったな」

「ねぇ、訊いていい? 何で、この三人なの? そりゃ、俺は嬉しいけど…」

「私も、そうだけど」

「…ん? もしかして、俺が、不満?」


柊と志貴ははっきり言わなかったが、見られている祐は自分を指差して苦笑した。


(まぁ、祐は口軽いしな…)


それに、他の二人に比べたら、俺と親密とは言い難かった。


「祐は俺の上司になる人間だから」


俺は理由を告げた。


「一番に伝えたかったのは志貴で、次は柊だけどな」


俺が笑うと、二人は照れた。


「あまり楽しい話じゃ無いけど、聞いてくれるか?
三人とも」


すぐに表情を引き締めた俺に


三人は、無言で頷いた。


(さて、どこまで話すか)


忍から言われたのは


『旦那様に迷惑をかけない事』


それに


『俺(忍)と付き合っているのは嘘だとばらさない事』


その二つだけだった。

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