《MUMEI》
嘘の一部訂正
「…祐也?」

「大丈夫?」


なかなか話し出さない俺に、柊と志貴が心配し始めた。


「俺は泊まるからいいけど、…」


時刻は既に十時近くになっており、祐は帰らなければならない二人を


特に、志貴を心配していた。


「…大丈夫。ちゃんと話すよ」


(去年から、決めてたし)


誕生日が来たら、ちゃんと


自分の産まれた時の事を語ろうと、心に決めていた。

「俺、嘘ついてた」


この一言を、ちゃんと言おうと決めていた。


「ごめんな」


謝ろうと、決めていた。


「嘘って…何?」


三人の中で、一番冷静だった祐が口を開いた。


そんな祐の声も表情も、動揺しているのがわかった。


(ごめんな)


本当は、『ここに来る前の全部と今の忍との関係』と言わなければならないのに


(俺のこれはまた、嘘なのかな?)


「両親が交通事故で死んだってところ」


それでも


俺としては、普通に訂正できる簡単な嘘の部分に激しく反応する志貴と柊を見て


(今は、これだけで良かったかもしれない)


そう思う俺がいた。

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