《MUMEI》

社会科見学当日。
私は、目覚ましを止めたものの、ベッドから離れたくなかった。今日はすごい地獄の日だと思う。
絶対に耐えれない…そう思うが、起きないわけにもいかず、私はもぞもぞと起き上がった。
制服に着替え、顔を洗い、髪を梳かす。
準備が整ったところで、リビングに行った。

リビングに着くと、既に優子が待っていた。…しかも朝食食べながら。

「あ、おはよー。」

目玉焼きを口にほおばりながら、優子は言った。

「何?何でいるの?…まぁ今更どうでもいいけどさ…なんかなんとなく分かるし。」

私は、深いため息をつくと、優子の前の席に座った。
お母さんが目玉焼きを持ってくる。

「早く食べないと遅刻になるんじゃないの?」

そう言われて、時計を見る。
出なければいけない時間まで、あと10分しかなかった。

私は焦って、無我夢中で食べ物を口に詰め込む。
ろくに噛みもせずに詰め込んだせいか、喉に食べ物が詰まった。
私は必死に吐き出そうとするが、なかなか出てこない。
このままでは確実に遅刻である。

優子が私の背中を叩いてくれた。ちょっと、力が入りすぎだけど…。
そのおかげでなんとか吐き出す。

「もー…大丈夫?ほら、もうこのぐらいにして歯ブラシしないと間に合わないんじゃない?」

いつもにないくらい優しい言葉をかけてくれる優子に、私は唖然とする。
心配してくれてるのは嬉しいけど…本当に?

歯ブラシをすませ、トイレに行き、もう一度身なりを整えて、完成だ。
そのまま玄関に行き、ローファーを履くと急いでとび出す。

「いってきますっ。」

優子は慌てて後ろからついてきた。

「おばさん、お邪魔しました。」

優子に「私をおいてくなっつーの。」と軽く叩かれた。だが、それはいつもよりも痛くなかった。
それもそのはず。
だって二人ともめっちゃ必死に走ってるから。



学校が見えてくる。チャイムが鳴り始めた瞬間、二人そろって校門にゴールイン。
息をぜいぜいと吐きながら、自分達のクラスの群れに行く。

先生からの点呼を受けて、列に混ざる。
私は徳山の隣に入る。


とてつもなく、嫌だった。徳山は嫌がらせ野郎だし、なんせ男だし…そんな奴の隣になりたくない。
しかも残念なことに…前も後ろも男子だった。


私は頭を抱えてうずくまった。


もう、大丈夫な気がしない…。

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