《MUMEI》

学年主任の長ったるい話が終わった後、バスに乗り込む。
バスに乗っている時間はおよそ2〜3時間。
我慢できる自信がなかった。

私が見ている限り、徳山は今日まだ一言もしゃべっていない。
いつもは何かとしゃべりかけてきていたのに、妙だった。
私としては嬉しいんだけど、なんかすっきりしなかった。

バスの中では、徳山が通路側、私が窓側に座っていた。
徳山は通路挟んで右の男子とずっと話していた。
想像していたよりも楽な展開に、私の心は最頂点を越える。
かといって、この喜びを誰かに見せるわけにもいかなかった。
私は窓に寄っかかって、目を閉じた。
覚えているのはそこまでだった。


誰かに叩かれた。そっと目を開けると、そこには徳山がいた。

「昨日早く寝ればよかったんじゃねーの?」


いつの間に寝ていたのか…
というか、また触られた。


私は、スプレーを肩にかける。
徳山は、そんな私の様子にもうすっかり慣れたようだった。

「とにかく、早く降りてこいよ。」

バスの中は、もう私たち二人だけみたいだった。
徳山はバスを降りていった。少し茶色がかった髪の毛が、少しボサボサになっていた。


絶対徳山バスの中で寝てたね…。
人のこと言えないじゃんっ。


私も徳山の後を追うようにバスを降りた。
もちろん少し離れながらだけど。

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