《MUMEI》 ガッ 傘は樹の顔を外した。 左耳を掠っている。 しかし、樹は気絶していて意識が無くなっていた。 「脆い、脆過ぎる」 アラタは吐き捨てるように言い、樹から離れた。 樹はぴくりとも動かない。十数人もの人間を病院送りにしたとは思えない精神力だ。 そうまるで別人 自分で考えたことにアラタは無性に腹が立つ。 これではアヅサの存在を認めたことになるからだ。 手持ちのビニール傘を樹へ投げ付けた。 止まない雨も知らない指も纏わり付く記憶達も 何もかも 腹が立った。 前へ |次へ |
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