《MUMEI》 義仲はヒラヒラと手をふりながら、彼らにほほ笑んで、それからわたしの顔を見る。 「道歩いてたらさー、肩が当たっただのなんだのってイチャモンつけられてー。慰謝料よこせってうるせーから、とりあえず黙らせようとおもって、ひとりずつボコッたんだよねー」 勝手に説明を始めた彼を、わたしは思い切り睨みつける。 「……そんでカツアゲたのか!たいした悪党だなっ!?」 厭味を言うと義仲は、違うも〜ん!とふざけた。 「よくあるでしょ?ホラ、示談金ってヤツ?」 「どこのチンピラだ、おまえは!」 まったく悪びれない義仲に、わたしは怒鳴り付けた。 そのとき。 「………あの」 弱々しい男のひとの声が聞こえ、わたしは我に返る。 そして、義仲とほぼ同時に振り返った。 そこには、青ざめた松本先輩の姿があった。 . 前へ |次へ |
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