《MUMEI》
はかない
「深刻な状況です」

医者は厳しい口調で珍宝に告げた。

眉間には深いしわが刻まれている。

「次に出血したら、生命の保証はしかねますよ」

そう言い残して、医者は病室から出て行った。

ベッドに横たわり眠り続ける氷室。その顔面は蒼白だった。

「ごめん、氷室っち。命をかけて、この俺に…」

珍宝は震える唇をかみしめた。

「俺のために、俺のために!」

何度も窓ガラスに額をぶつけながら、珍宝は泣きじゃくった。

窓の外はどしゃぶりだった。

「いいのさ」

いつの間にか目を覚ましていた氷室が、白く渇いた唇を開いた。

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