《MUMEI》

「──こちらこそ」




 アゲハ君が、笑った。




「にしても‥石井はまだ来る気配が無いな‥」

「うん──」




 まだ旅館にいるのかな。




「もしかしたら‥」

「──ぇ」

「石井はわざと僕達を2人きりにする為に──」




 その言葉を聞いて、私はハッとした。




「───────」




 今日がここにいられる最後の日だから──ミドリ、気を遣ってくれたんだ。




「──いい友人を持ったな」

「うんっ」




 ──本当に。 ミドリがいてくれて良かった──。

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