《MUMEI》
逃げたくないんだ。
PM3:50










「…よし!!
完璧!!」









こんなに髪をバッチリ決めて、


私服にも気を遣ったのは久々な気がする。


香水も久々につけた。


…美紀の好きだったライオンハート。


学校にこれをつけて行ったことはない。


友達と遊ぶ時だってつけなかった。


忙しい毎日の中で、


いつしか私服に気を遣わなくなった。


こんなに気分が変わるもんだったんだな。


忘れかけてたよ。








「ちょっと出かけて来る!!」


「あらそう?
何時頃戻って来る?」


「ん〜...
わかんない。」


「お母さん優の迎えあるから鍵持って出てね。」


「優?


あぁ、


今日スイミングだっけ?


わかった。」


「気を付けてね。」












車の鍵と、


家の鍵を持って、


「あいよ〜!!」


家を飛び出した。









態度に出さないようにするのが大変だった。


僕がこんなに緊張するなんてな。


試合とはまた違った緊張感。


…これもまた、


久々だね。

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