《MUMEI》
聞かない
    〜歩視点〜


美早希の去っていく後ろ姿を見届けた後、俺は小湊さんに声をかける。


「大丈夫?」


すると小湊さんは、心底驚いたような表情を浮かべた。


「・・・・・何があったか聞かないの?」


小湊さんの質問に俺は苦笑いを浮かべながら答える。


「美早希、何も言わずに行っただろ?


それって言いたくないってことだから・・・無理に聞いたりしない」


っというか出来ない!


裏で嗅ぎ回ったって美早希にバレたら、後が怖い。


現に1回殺されかけたし・・・・・


そんな俺の考えを知らない小湊さんは、目をパチクリとさせていた。


「・・・・・気にならないの?」


暫く驚き、瞬きを繰り返していた小湊さんの質問にまたもや苦笑する。


「気になるけど、好奇心だけで聞いちゃいけないこともあると思う」


俺の答えに小湊さんは、またもや目を丸くした。


「そんな人居るんだ・・・」


小湊さんの呟いた言葉に俺は首を傾げる。


本人は無意識に言葉を零したのか、視線を下に落とし何か考えているようだ。





俺の視線に気がついた小湊さんは2、3回瞬きをして曖昧に笑った。


「ごめん!泉、考えごとしてたみたい。




・・・・・もう遅いし、泉帰るね」


じゃあねっと付け足して目を合わせず、作り笑いを浮かべて立ち去ろうとする小湊さんの腕を無意識に掴んでいた。


小湊さんは、驚いたような戸惑っているような顔で俺を見上げる。


わっ何してんだ俺!


なんか言わなきゃ!!


必死に考えて出た言葉は

「送って行くよ」


だった。


小湊さんは、口をポカーンと開けたまま数秒間俺を見上げていた。


「小湊さん?」


何も言わない小湊さんに痺れを切らし、名前を呼ぶと


「あっえっ?


でも・・・な・中原くん家、反対方向だよね?」


最初の方は、しどろもどろだったが言い終わると小湊さんはいつもと同じキラキラな笑顔を俺に向けた。


「でも遅いし送ってくよ」


チャリだけどねっと苦笑いを浮かべながら、チャリ置きに向かって歩き始める。


「じゃあ、お言葉に甘えちゃおうかな〜」


っと甘えるような口調で言い、小湊さんは小走りで俺の隣まで来た。

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