《MUMEI》
帰り道
   〜歩視点〜


チャリ置きに着き、小湊さんを後ろに乗せチャリをこぐ。


「ちゃんとナビしてね」


振り向かずに小湊さんに声をかけると、了解っと元気な声が返ってきた。




「あっ次の角、左ね」


小湊さんの指示に従い、左に曲がると下り坂に差し掛かった。


思ったより急な坂で、小湊さんが俺のシャツをきゅっと握る。


坂をくだりきっても、小湊さんは俺のシャツを握ったままだった。


「ねぇ中原くん?


下の名前で呼んでもいい?」


少し甘さを含んだ口調で小湊さんが俺に質問する。


「んっいいよ!」


特に断る理由もなく、承諾すると今度は甘えるような口調で小湊さんは続ける。


「泉のことは、泉って呼んでね!


あっ泉の家ここ!」


俺が分かったと言おうとすると、家に着いたらしく泉は俺のシャツを引っ張った。


チャリを停めると、泉は降りぺこりと頭を下げながらお礼を言う。


「今日はありがとね!


送ってくれたのもだけど何も聞かないで居てくれてありがとう。


じゃあまた明日ね」


笑顔を浮かべながらヒラヒラと手を降る泉に手を振り替えしながら、チャリをこぎ家に向かう。

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