《MUMEI》

「俺も綺麗な花嫁になれる?」

母親と上手くいき始めてた時に再婚が決まり、突然の親離れになったせいか光は寂しいのだ。


「……光は黒が似合うな、」

替えの黒いシーツを光の躯に巻き付ける。
きめ細かい肌に対比した黒がよく映えた。
確認するように頬を撫でると光はとろり、と瞼を落とす。
接吻は頬を撫でる具合にそっとした。
今朝、貰った花束から百合を手折り耳に留めてやる。
百合の濃厚な香りは昨晩の暑苦しいものを吹き飛ばした。
綺麗な花嫁だ。


親指の指輪を抜き取って、薬指に嵌める。
指輪のサイズは相変わらず大きい。


「あ、そうだ。国雄に渡すものあったんだ。」

自分の上着から漁ってきたのは指輪だった。


「サイズは?」


「貰った指輪あるから。」


「付けて付けて。」

催促してみた。
光は差し出した薬指に嵌め込んでくれる。


「ウン、ぴったり。」

薬指を見ては満足そうな笑みを浮かべている。


「この家もあと一週間か。」


「寂しいね。」


「お前が勝手に入って来た時はこんな関係になるとは思わなかった。」


「俺は予感はしたよ。目が語ってた。俺様に惚れろーってさ。」


「なんだそれは。」

いつからそんな傲慢キャラに?


「俺も必死だったからね、なんか思い出したくないことばかり……」

確かに二人の馴れ初めは軽い会話の中で出せるような代物では無い。


「互いに胸に仕舞っとく。よろし?」

胸を人差し指で突くと光も黙って頷いた。

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