《MUMEI》 翌朝──翌朝。 「キバ、おはよ〜」 目が覚めたハルは起き上がると、大きな欠伸をしながら傍らの籠を覗き込んだ。 だが、あの幼い狼の姿は、もうそこにはなかった。 「────っ」 言葉が出て来ない。 (キ‥バ‥?) 慎重に辺りを見回すが、もはやキバの気配はない。 〔〔明日には出てくからな。止めたって聞かねーぞ〕〕 あの言葉が蘇る。 「‥ほんとに‥‥行っちゃったんだね‥」 ハルはベッドに腰掛けると、まだ温もりが残っている籠を、そっと持ち上げて膝に乗せた。 「‥?」 中に、何かが残されている。 昨日キバの脚に巻いてやった包帯が、綺麗に畳んで入れられていた。 「キバ‥」 無意識の内に、自らがつけた狼の名前を呟く。 そして、小さく嗚咽した。 もう会えないのだろうか。 キバは無事に生き残る事が出来るのだろうか。 そんな事を思いながら、ハルは心の中で囁いた。 (‥‥‥元気でね‥) 〔おい〕 「!?」 前へ |次へ |
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