《MUMEI》

「…………ぅうんっ」
力が抜けて体の軸がぶれ、苦しさのあまり変な声が出てきた。
傘の柄が首から外れる。




「……なんだ、
そーゆー顔も出来るんだ。 不感症のゾンビだと思ってたけど

お前
 ちゃんと生きてるな」
樹の顔が離れていく。



アラタは初めて何が起きたか理解した。

高柳 樹と唇と唇による接触

鳥肌がたつ。
冷えていく感覚。
血が上ってゆく。
熱くなる感覚。
手が樹の頬に向かう。

すかさず樹に手首を掴まれ身動きが取れないようになる。



    「離せ」



「無理。命令は俺に無効。
俺は樹みたいに優しくないから」


「人生最大の汚点。
ナイフがあったら唇も手首も切り取っている。」




「そりゃ素敵。



突き放した言い方するけど

本当は俺に会いたかったんじゃない?
樹含め。触れたいくせに
嘘はいずれバレるよ」


「黙りなよ。お前の声、虫酸が走る。」


「口説いてる?
そんな言い方されるともっと話したくなる」

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