《MUMEI》

奴等は何も言い返せず、ぐっと、言葉に詰まる。


「そうなんか?」


そんなことは、薄々感じていた。


でも、信じたく無かった。


俺は一体、どんな表情をしていたんだろう?


奴等は一瞬、俺を見て顔を曇らせたが、直ぐにあの、挑戦的な表情に戻った。


「そうだよ。

悪いかよ。」


壊れた玩具のように、笑う。


また別の一人が言った。


「凪谷は俺等とは違うんだ。

頭脳もあるし、足も速い。


体力はずば抜けているし、才能もある。


プレーなんて、乱れ一つない。」


更に別の一人が続ける。


「だから俺達は、凪谷の動きが突然悪くなったから、どうしたらいいか分からなかったんだ。」


「そんな言い訳通じると思ってんのか!?」


一希は両拳をギュッと握り締めて、怒号を浴びせた。


だがそれを無視して、奴等は言う。


「結局は才能なんだよ。


才能無くして、サッカーなんて出来ないんだ。


それと同じで、実力の無い奴が実力のある奴を頼るなんざ、必然的なことだろ?」


「……のか?」


「え?」


「本気でそう思ってんのか!?」


一希は肩を怒らし、両拳を震わせていた。


そんな彼に申し訳無く思った。


だけど不思議と、怒りが湧き上がって来ない。


来るのは、“絶望感”。


奴等を信じていたのに……。


奴等とだけは、楽しくプレー出来ると思っていたのに……。


それが今、裏切られた。

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